チコリ(キク科キクニガナ属)
土壌医●藤巻久志
戦後の日本ではアスパラガス、レタス、ブロッコリーなど多くの西洋野菜を食べるようになりました。チコリは普及途上で、ホテルやレストランなどの業務用は増えましたが、一般家庭の消費はまだ少ないです。国内での生産もまだまだ少なく、ベルギーやオランダなどからの輸入に頼っています。
チコリを1974年に初めて輸入したのは、築地市場の仲卸・大祐の創業者・大木健二氏です。氏の著書『大木健二の洋菜ものがたり』によると、最初はほとんど売れなかったが、だんだん人気が出て輸入量は増加し、ベルギーの輸出業者は金回りが良くなり、豪邸に住み高級車を乗り回し、政府から勲章をもらったとのこと。チコリは欧州ではアンディーブといいます。1980年代に農水省の指導のもと「将来混乱が予想される野菜の名称統一会議」が開かれ、呼称について議論されたという記録が同書に残っています。青茎パクチョイと青軸パクチョイはチンゲンサイに、立ちレタスと立ちチシャはコスレタスになど38品目が統一されましたが、チコリとアンディーブをどちらにするかは決まりませんでした。
チコリを流通しているものと同じように軟白栽培する場合は、6、7月に種まきします。育った緑葉は苦くて食べられません。11月に根株を掘り上げ、それを伏せ込んで出てきた芽を軟化栽培し、萌芽(ほうが)が15cmくらいの砲弾形に結球したら収穫します。
チコリはサラダとしてほのかな苦味とシャキッとした歯触りを楽しみます。1枚の葉をボートに見立てて、チーズやゆで卵などをのせると、しゃれたオードブルになります。
遮光と保温を必要とするチコリは家庭菜園ではやや難しい野菜ですが、緑化栽培ならプランターで簡単に栽培できます。ブルーの花が咲き、雌しべと雄しべがとても神秘的です。エディブルフラワーとしても食卓をにぎわします。