ゴマ(ゴマ科ゴマ属)
土壌医●藤巻久志
健康食品の広告を目にしない日はありません。ゴマのサプリメントの通販も多いですが、原材料のゴマは残念ながら99・9%が輸入品です。日本の農家が昭和中期までゴマを選別するために使っていた手箕(てみ)や、天日干しをした茣蓙(ござ)は文化遺産になってしまいました。
ゴマの原産地はアフリカのサバンナ地帯で、ナイル川流域では紀元前3000年にはすでに栽培され、クレオパトラも愛用したといわれています。漢字では「胡麻」と書くように、日本へはシルクロードの胡国、中国を経由して伝わりました。
飛鳥時代に仏教が伝来し、肉食が禁忌とされてからはゴマが肉に代わる高タンパク食品として用いられるようになりました。ゴマあえやゴマ豆腐、ゴマ油を使った天ぷらなどの精進料理は、仏教圏以外の国々でもヘルシーな食事として注目されています。
日本では種子の外皮の色によって、白ゴマ、黒ゴマ、金ゴマに分類されますが、世界には形や大きさなどが違うさまざまな品種が約3000種あります。白ゴマは世界各地、黒ゴマは主にアジア、金ゴマはトルコなどで栽培されています。
ゴマは強い抗酸化作用を持つゴマリグナンを約1%含み、セサミンはその構成成分の一つで、有害な活性酸素の働きを抑え、老化防止に役立つと考えられています。ゴマの表皮は堅く、そのままでは栄養成分を取ることは難しいので、すり鉢ですって皮をつぶします。
晩春に種まきしたゴマは短期間で1mほどになり、夏になると白や淡いピンクの釣り鐘形の花を咲かせます。秋になって実が熟してくると、自然に裂け、種がはじけ出てきます。
江戸時代に「胡麻胴乱」という菓子があり、その中が空洞だったのが「ごまかし」の語源になったといわれています。健康食品の中には怪しいものもあるので、広告にごまかされないように注意してください。