カブ(アブラナ科アブラナ属)
土壌医●藤巻久志
アブラナ属は染色体数nによって、クロガラシ類(n=8)、キャベツ類(n=9)、在来ナタネ類(n=10)、アビシニアガラシ類(n=17)、カラシナ類(n=18)、セイヨウアブラナ類(n=19)の六つに分類されます。
カブは在来ナタネ類に属し、仲間にはハクサイ、チンゲンサイ、野沢菜、タアサイ、水菜などがあります。これらの野菜は春になるととう立ちして黄色の十字花を咲かせ、「菜の花」としておいしく食べられます。
春の七草のスズナはカブのことです。原産地はアフガニスタンまたは地中海沿岸といわれています。日本のカブは中国を経由して伝わった東洋型と、シベリア・朝鮮半島経由の西洋型があります。低温に敏感な東洋型は西日本で、寒さに強い西洋型は東日本で多く栽培されています。東洋型と西洋型の天下分け目は岐阜県の関ケ原です。
西洋型は葉や茎に毛茸(もうじ。産毛のこと)がなく、茎葉もおいしく食べられます。代表的な品種は東京の「金町小カブ」で、現在流通しているカブの多くは金町系です。小カブは直根を切らずに販売されるのが一般的です。葉はみずみずしく、肌は照りがあり、直根は細いほど、品質が良いとされています。真っ白い根と青々とした茎葉のコントラストの美しさはまさに芸術品です。
カブは各地の気候に合うように変異し、数多くの品種が誕生しました。北海道の「大野紅カブ」、滋賀県の「日野菜カブ」、京都府の「聖護院カブ」など大きさ、根色、根形もさまざまです。育種は今も続けられ、表皮も内部も黄色の「味こがね」、手でピンクの皮がむけて生食できる「もものすけ」などの品種が次々に発表されています。
スズシロとも呼ばれるダイコンは、カブと似ていますがダイコン属で、黄色ではなく白や薄桃の花を咲かせます。カブもダイコンも葉付きのまま保存すると、水分が葉から蒸散し、品質が低下します。